前回までの記事
【2】有機農業の王道 多品目栽培にはメリットとデメリットがある
【3】有機農業の王道 少量多品目&直販型定期宅配という安定戦略
有機農業の世界でずっと昔から行われている(といっても1970年頃から始まったと言われている)育てた農産物を契約したお客様のもとへ直接お届けするというスタイル。
日本では産消提携と呼ばれたりするようですが、アメリカではCSA(Community Supported Agriculture)という言い方をされているようです。
まあ、呼び方はなんでもいいんですが、その大きな特徴は
生産者と消費者が直接つながっている
というところにあります。
今回はこの点についてのメリット・デメリットについて書いていきます。
目次
中間コストを省くため見入りが大きい
まず一般的な農産物の流通を見ていきます。
(画像参照:東京中央卸売市場)
生産者(農家) → 出荷団体(農協など) → 卸売市場 → 小売店(スーパーなど) → 消費者
生産者(農家) → 出荷団体(農協など) → 小売店(スーパーなど) → 消費者
このルートがすべてではありませんが、だいたいこのような流れになっています。
生産者が収穫した野菜を出荷できる状態に調整して箱詰めして、それを農協に運ぶ。
農協は生産者から集めた野菜を卸売業者に渡して、そこで競りにかけられるなどして価格が決まり行き先が決まる。
卸売業者から運ばれた野菜は、各小売店で店頭に並べられる。
といった感じです。
生産者から消費者に野菜が届くまでに、いくつかの業者を経ていることがわかります。
ここで考えるべきことは。
間に入っている業者が、仲介手数料つまり中間マージンをとっている。
ということ。
たとえばスーパーで100円の大根が売られているとすると、小売店の利益、流通業者の利益、卸売業者の利益、農協の利益それぞれ乗せられているので、農家の手元に入ってくるのはじつは20円ほどだと言われています。
しかもこの20円は売り上げに過ぎません。
ここからさらに経費が引かれて最終的には大根一本から10円の収入が生まれる、という悲惨な数字になっていきます。
ところが。
流通の過程で中間業者をできるかぎり入れない直販型農業だとどうなるか。
お客様から1000円頂けば、1000円が丸々フトコロに入ります。
100円の大根を売ったのであれば、100円が農家の手元に残るんです。
もちろんここから経費を引いていきますが、さきほどの10円というような悲惨な数字にはなりません。
農協に出荷して、それが卸売市場に運ばれて、さらに小売店で陳列されて、ようやく消費者の手に渡る。
これでは多くの中間業者に利益を上乗せされてしまい、農家の手元には目減りした金額しか回ってきません。
ここで農家が、直接お客様と契約をしてそこへ直接売っていくことで中間マージンを限りなくゼロに近づけて、身入りを多くすることができます。
そして、これを実現するために有機栽培という付加価値が現状では大きなプラスになっています。
無農薬だからこそ農家から直接買いたい、という消費者は多いですから。
小さな面積でがっつり稼げる
では、直販で中間搾取が少ないとどんないいことがあるんでしょうか。
間違いなく言えるのは栽培面積が小さくて済むということ。
商品ひとつあたりの利益が大きいんだから、栽培量が少なくても得られる利益は大きくなります。
先ほどの大根の例でいくと、売り上げ1000万円を得ようとした場合は次のようになります。
通常の流通を通すと、大根1本20円の売り上げになるので
1000万円 ÷ 20円/本 = 50万本
という計算になり、1000万円を売り上げるためには大根を50万本出荷しなければならないことがわかります。
直販型でお客様に売っていった場合はどうなるかというと
1000万円 ÷ 100円/本 = 10万本
という計算になり、大根を10万本出荷すればいいことになります。
ごくごく単純にいえば、直販にすることで栽培面積が5分の1になるということです。
そのへんの普通の農家が1ヘクタールの広大な農地を耕作しているなかで、直販型農家は0.2ヘクタールの大きな家庭菜園レベルの面積で悠々と同額を稼いでいる。
という話です。
けっこう魅力的ですよね?
セット売りだから単価が高い
多品目&定期直販型農業でとくに特徴的なのは、
数種類の野菜や果物などを抱き合わせて販売する
という形態です。
大根なら大根、トマトならトマトだけを単品で販売するのではなく、最初から詰め合わせボックスという形で販売していることが多いです。
つまり、詰め合わせボックスをひとつの商品として売っているんです。
これがなにを意味するかというと。
ずばり商品単価が上がります。
客単価が上がる、とも言えます。
ひとりのお客様が購入する商品は、詰め合わせセットという単価が2000円とか3000円といった金額になります。
そのセットを二つも三つも購入するお客様は稀ですが、農産物の販売価格としてはとにかく単価は高いと思います。
メロンであればこのくらいの単価があってもおかしくありませんが、1000円を超えるような農産物はなかなかありません。
それを、商品を抱き合わせてセットにすることで高い商品を作りだしている。
1000円を超える商品をいとも簡単に作りだしている。
多品目&定期直販型農業での詰め合わせセットとは、そういう強力な商品なんです。
そして。
単価が高いから大勢に売らなくてもいいんです。
前回の記事でも触れましたが、こういう詰め合わせボックスを販売している農家はお客様と定期契約を交わしていることがほとんどです。
毎週お届けします。
隔週でご自宅まで直送致します。
という契約です。
2000円とか3000円といった高額商品を、同じお客様が定期的に購入してくれる。
そんな販売方法です。
仮に3000円の商品を毎週一回発送したとすると、1年間50週で50回買ってくれることになります。
3000円 × 50回 =15万円
そのお客様は、15万円の商品を購入してくれていることに等しいわけです。
ということは。
毎週3000円のセットを購入してくれるお客様を100人見つけることができれば、それだけで
売り上げ1500万円
に達するということです。
1億人のなかから、あなたの大ファンを100人見つける。
たったそれだけのことで、売り上げは一千万円を超えるんです。
これはすごいことだと思います。
プロに任せることも大事です
ただし良い面ばかりではありません。
直販を実現するには営業・流通・販売まですべてを自分でやらなければならないので、栽培以外に多くの時間を割く必要があります。
一般的な農家に見られる、営業や流通、販売をそれぞれのプロに任せて生産に専念するという形態。
これは効率化、分業化という点で非常に大きなメリットですが、その効率性を無視して高収入を求めるわけです。
ようするに、営業・流通・販売を担っている人たちの取り分を、自分自身でやることですべて自分のフトコロに入れてしまおうというわけ。
だから。
ある程度のレベルで営業・流通・販売をこなせなければ、直販のメリットを生かしきることはできません。
営業・流通・販売でものすごく時間をとられていたり、プロに任せてしまったほうがよかったんじゃないかという仕事をしてしまうと、直販のメリットは薄れます。
たとえば。
お客様を見つけるためにホームページを自分で作ろうとします。
パソコンなんてそうそう触ったことがありませんから、まずはパソコンを使えるようになるために勉強して慣れます。
ホームページを作るにはTHMLやcss、javascriptやphpといったコンピュータ言語を使えなければならないということで、一から勉強してホームページを作っていきます。
そうして出来上がったホームページ。
もしかしたらちゃんとしたものができて、yahooやgoogleで検索したときに望むキーワードで上位に表示されているかもしれません。
思い通りに注文が入ってくるかもしれません。
でも。
そこに至るまでに使った何百時間という大きな労働は、その成果に見合うものでしょうか?
業者に依頼して作ってもらえば20万円で済んだものを、そこまで自分でやる必要があったんでしょうか?
その答えにもちろん正解はありません。
最初に20万円をかける金銭的な余裕がない場合もあるでしょうし、もともとインターネット関連の仕事をしていて知識があるという人もいるでしょう。
極端にパソコンが苦手でそれなりのホームページを作るのに何千時間もかかってしまうようなら、それは自分でやることに意味がないのかもしれません。
自分でホームページを作るべきだったかどうかは、その人によります。
とはいえ。
ホームページ製作業者がつくるものは、素人が一から作ったものとは完成度が違います。
それは見た目の良さだけではなく、検索エンジン対策であったり、顧客目線でのサイト作りだったり、メンテナンスのしやすさだったり、様々です。
そりゃあそうですよ。
何百何千というサイトをつくってきたプロの仕事ですから、蓄積されたノウハウが詰まっています。
そういう業者にお金を支払ってホームページをつくってもらう。
そこには一定の価値があるはずです。
ホームページ制作に限らず、営業・流通・販売その他もろもろいろんなところでプロの仕事があります。
それをすべて自分でやってしまおうというのが直販型の農業ですから、プロには敵わないまでも業務全体の足を引っ張らない程度には仕事をこなす必要がありますし、それができなければ直販型でやっていく意味が薄れてしまいます。
(インターネット通販を含め)営業も、流通も、販売も、平均的にこなせて初めて直販型は活かされるんです。
もちろん。
営業だけは業者に頼もう、販売は苦手なので業者に委託しよう、という選択もできます。
そのときは自分の取り分が少し減る、ことだけは覚えておきましょう。
このように。
産消提携型農業にはメリットとデメリットがあります。
知ったうえで自分にはできると思えば、やってみる価値はあります。
自分でやればやるほど入ってくるものが増えるんですから。
次回は。
【5】有機農業の王道 少量多品目&直販型定期宅配 大口取引せずにリスク分散
どうぞお楽しみに。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・