米や野菜を育てるときの基本は「種を播かなきゃ始まらない」。
これは当たり前のことですし、避けて通れない道です。
その種について今回は書いていきます。
種苗(しゅびょう)。
調べていくとけっこう奥が深くてハマると抜け出せなくなるくらい魅力的な世界です。
新規就農を検討している段階ではまだまだ考えが及ばない領域かもしれませんが、
どんな品種を選ぶのか
F1(交配種)にするのか固定種にするのか
といった品種選びにそのうち頭を悩ませることになります。
たんに「キャベツを育てたい」「米を育てたい」と言っても、そこには数え切れないほどの品種が存在していてそこから自分に合ったものを選ばなければいけないんです。
収穫量が多い
病気に強い
見た目が揃いやすい
見た目が特徴的
生長が早い
よく茂る
美味しい
いろんな目的で改良されている品種の中から、自分が望む品種を探し出す必要があります。
どんな品種がいいのかについては個々の事情によるので触れません。
具体的にどんな作物を育てるのか明確になってから決めても遅くないので、品種という世界があることだけ頭の片隅に入れておいてもらえれば大丈夫です。
品種については。
もし興味があれば調べてもらうといいんですが、品種について書かれている書籍はけっこう出ています。
それらを一読しておくだけでも就農時にドタバタしなくて済むようになりますが、一部の書籍で
種の安全性
について誤解を招くような表現をされていることがあるので、ここで私見を書いておきます。
書籍を信用するのもよし、小さな農家が書いている信頼のおけない当ブログを信じてみるもよし。
いろんな意見があることだけは知っておいてください。
目次
固定種と交配種
食の安全を追求していると挙がってくる問題のひとつに
タネの安全性
があります。
作物を育てるときのスタートになる種まき、そこで使用するタネについてです。
そのタネに農薬はかかっていませんか?
そのタネは交配種ですか、それとも固定種ですか?
交配種だとしたら雄性不稔(ゆうせいふねん)の問題についてどのように考えておられますか?
消費者からこのような質問を受けることがあります。
農業者にはこのような質問に答える義務があります。
このような質問のなかから今回は、固定種と交配種がどのようなものかについて説明していきます。
ごく簡単に言って、固定種とか交配種というのはタネの父親と母親がどのような素性を持っているかで分類されます。
人に例えると分かりやすいのですが、
固定種は、両親が日本人、両親がロシア人など同じ人種の両親から生まれたタネ
交配種は、日本人とロシア人のハーフ、というように異なる人種の両親から生まれたタネ
と表現できます。
日本人は長い間、ほかの人種とほとんど交わることなく日本人の血を繋いできました。
日本人を全体としてみれば、身長はそれほど高くなく、肌は黄色で髪は黒い、和を大切にして控えめな性格、という特徴をもちます。
日本人同士で結婚して子供を産んで育てる。
その子が大きくなってまた日本人と結婚し、子どもを産んで育てる。
それを繰り返していくことで日本人としての性質は一層強まっていきます。
長い間、命を繋ぎながらその日本的外見・気質ともいうべき性質を固定してきました。
固定種のタネというのは、このような純血日本人的性質を持っているタネということができます。
一方、国際化が進むにつれて、日本人が外国人と結婚することが増えてきました。
日本人の男性と、ロシア人の女性が結婚をする。
そして子どもが産まれる。
よくありますよね。
その産まれた子は一般的に、日本人とロシア人のハーフという言い方がされます。
日本人の血とロシア人の血が半分ずつ入っています。
そして、両方の人種の性質を受け継ぐことになります。
見た目は日本人のように髪が黒くて肌が黄色なんだけど、背が高くて目が青い。
性格は和を大切にしながらも、考えていることを曖昧にせずストレートに表現します。
というような感じです。
交配種のタネというのは、このようなハーフの性質を持っているタネだといえます。
ハーフが産まれるという現象。
これは自然界で、植物の世界でもふつうに起こりうる現象です。
大きな実をつけるけど病気にかかりやすいAという植物。
実は小さいけどとにかく病気には強いBという植物。
この両者が受粉をして交配が行われると、そのタネが発芽して育ってきた植物は
大きな実をつけることができるうえに病気にも強い。
という性質を持つようになります。
これを商業的に利用して生み出されているのが交配種というタネです。
一代交配種とかF1品種とかいう言い方もされます。
自然界で起こっている現象をうまく利用して、収穫量を増やしたいとか見た目を揃えたいとか美味しさを高めたいとか、さまざまな要望を満たせるような野菜を生み出す努力をする。
そのための手段として交配が用いられているわけです。
けっして反自然な行為ではありませんし、タネの安全性に疑問を投げかけるものでもありません。
だって自然界で当たり前のように起きていることなんですから。
固定種だから安全とか、交配種だから危険とか、そんなのは重箱の隅をつつくようなレベルの話です。
交配種は危険だ!と言ってハーフの人たちを敵に回しますか?
人種のるつぼと言われるアメリカを敵に回しますか?
交配種と言われるタネを否定することは、ハーフや多国籍国家を否定することに等しい行為です。
・・・ちょっと言い過ぎかもしれませんが。
固定種のほうが美味しいというデマ
これとは別に、固定種の野菜のほうが美味しい、という噂も聞かれます。
実際は固定種にも美味しい品種はありますし、交配種にも美味しいものはあります。
固定種だから美味しいと言っているのは純血サラブレッドをありがたがるのと同様で、たんなる思い込みだと考えて間違いありません。
交配するときに美味しさを追求するような品種改良をされているものが少ない。
耐病性とか収穫量ばかりが重視されている。
という傾向があるのは事実ですから、このことを取り上げて固定種のほうが美味しいという主張になるのかもしれません。
ですが、固定種だって美味しいものまずいものありますし、交配種でも美味しいものまずいものはあります。
固定種なのか交配種なのかという基準で品種を選ぶのはナンセンス。
そうではなくて、ごく単純に美味しさを重視している品種を選ぶ、それだけでいいんじゃないでしょうか。
気にしないのが最良
このように。
固定種=安全、交配種=危険
という解釈は行きすぎた考えですし、固定種だから美味しいという偏った見方もよくありません。
農家は目的によって使い分けをしているだけです。
とにかく美味しい作物を育てたいんだ、という農家は美味しい品種を選びます。
その土地に根付いた地元の味を世に広めたい、という農家は昔からある固定種を選びます。
生産第一、たくさん安定して採れることが良いものを安くお届けする一番の近道だ、と考える農家は交配種の中から希望を叶えられる品種を選びます。
たくさんある品種の中から目的にあわせて選択するのであって、そこに固定種限定という枠を設けてしまうのは非常にもったいないことです。
選択の幅を狭めてしまうのはもったいないですよ。
ということで。
固定種・交配種については気にしない、というのが生産者にとっても消費者にとってもベストな立ち位置ではないか。
と私は考えています。
多品目栽培でこんな間違いをしていませんか?
たくさんの種類の野菜を同時に育てる、かんたんに表現すれば家庭菜園を大きくしたような農業。
このような、いわゆる多品目栽培は、有機農業ではよくやられている方法なのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そして、多くの農家がやってるんだから自分にもできるだろうと、独学で、農家研修で、栽培の基本を学んでから実際に自分でやってみるのですが・・・
このときすでに、じつは大きな間違いをしています。
有機農業が慣行農業の5倍も儲かるって!?
有機農業者は、あまりお金の話をしたがりません。
「収入に魅力を感じて農業をしてるんじゃない。わずらわしい人間関係から解放されて、健康的な暮らしをしたいから有機農業の道を選んだんだ。」
と、収入は二の次だと言います。
だからこそ見えなくなっていた真実。それは、
有機農業はちゃんと稼げる
ということ。家族を養っていくことくらいは簡単に実現できます。しかも、栽培がうまいとかヘタとか関係ありません。誰でも実現できるものです。
ただし、条件があります。
それは・・・